ひと☆こと~ラヴストーリィ
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別れ際に差し出されたその手に彼女は戸惑っっていた。
待ち合わせに遅刻してしまった。
髪には寝癖がついていた。
一緒に食べたランチのスープをブラウスに垂らしてしまった。
トイレに行ったら列が長くて遅くなってしまった。
(きっと大きい方だと思われたかも…)
急いで駆け込んだドアに挟まってしまった。
居ると思って振り返り話しかけたら人違いだった。
お気に入りのバッグをガードレールに引っ掛けた。
自販機の前で小銭を落っことした。
せっかくのデートなのに……
やっと叶った彼とのデートだった。
(この手は…もうさようならの合図?)
(手を取ってドラマのように引き寄せてくれることは…ないよね)
差し出された手をそのままにはできない彼女は手を近づけた。
彼は、ふと笑みを浮かべて言った。
「はい。お手!」
彼女は、思わずその手に手をかけた。
「やっぱり面白い。おもちゃみたいだね。キミ。また会おうね」
彼女は「ワン」と言いかけて顔を赤らめた。
作品名:ひと☆こと~ラヴストーリィ 作家名:甜茶