【無幻真天楼 第十三回】ふわふわり
「あ…うん…?」
どもりながら悠助がうなずくと阿修羅が目を細めて俯き腰に下げてあったカンブリを撫でた
「…オライのこの傷はな…竜がつけてくれたんきに…」
自分の頬についている傷を指差して阿修羅が言う
「あーあ…父親の失態を償うがよい京助」
「あのな;」
坂田がヤレヤレという感じで京助の肩をたたく
「いや別に責めとんわけじゃないんきに; …むしろ感謝…やんな…」
傷を撫でて阿修羅が顔を上げた
「オライはな元々【天】の下町…見たことあるだろ? あそこにいたんきに」
「ああ!! 京助が迷子になったところ!!」
「うっさい!!;」
阿修羅の言葉に過去を思い出した中島がポンッと手を打って言った
「京助迷子になったの?」
悠助が京助を見ると京助が目をそらした
すると悠助が立ち上がり
「…ちょ…; なんだなんだ悠;」
無理矢理京助の膝の上に座り抱きついた
「…暑いぞ悠;」
無抵抗ながらもボソッと京助が言う
「……何かたりなくねぇ?」
その様を見ていた坂田が言うと一同が顔を見合わせた
「…何か? …って…言われれば何か足りない…ねぇ」
南も言う
「…なんだろね…」
矜羯羅もなにかがわからずに言った
「そのうち思い出すんじゃない?」
お面を少しあげて麦茶を飲んだ鳥倶婆迦が言う
「…慧喜…」
緊那羅が慧喜を見ると慧喜はただどこかを見ている
まるで慧喜の中に慧喜ではない何かがいるみたいな
そんな感覚にとらわれてまさかと緊那羅が頭を振った
「なにしてん;」
「えっ; あ…なんでもないっちゃ;」
ソレを見た京助が突っ込むと緊那羅がはっとして苦笑いを返した
「オライはなー…まぁいわゆる…良い子の部類じゃなかったんきになー…; ハッハ」
阿修羅が頭をかきながら笑う
「荒くれてたんきにー…;」
「きゃぁ!! 不良ですわよ奥様!!」
「まぁ!! なんということでしょう!!」
きゃあ! という仕草をしつつ坂田と南が阿修羅を見た
「で、ソレをとめて改心させたのが京助のパパンでそのとき喧嘩してつけられたのがその傷…ってか?」
中島が先を読んだ考えを口にした
作品名:【無幻真天楼 第十三回】ふわふわり 作家名:島原あゆむ