【無幻真天楼 第十三回】ふわふわり
「いいか? この団子を食ったからには俺のお供しなきゃ駄目なんだぜー」
「そうなの?」
白いキビ団子を手に取った鳥倶婆迦に中島が言った
「あーモモタロさんやんきになー」
阿修羅が緊那羅から麦茶を受け取りながら言う
「モモタロ?」
「あー昔々犬とサルと鳥つれて鬼退治ーって話」
鳥倶婆迦が首をかしげると南が大まかに桃太郎のあらすじを話した
「…犬と…サルと…鳥…それってゼンゴと迦楼羅と京助?」
「ちょっとまてぇーい!!; 犬と鳥はわかるにして何でサルが俺なんだっつーの!!;」
鳥倶婆迦の言葉に京助がテーブルに勢いよく手をついて立ち上がる
「なんとなく」
「なんとなくで中島のお供になんかなりたくねぇよ!!;」
「ひっどーい!! キョンちゃんひっどーい!!!」
ギャーギャー怒鳴る京助とオイオイ泣きまねする中島そしてその中島の頭を撫でる坂田
「アッハッハッハ!! いっやー…賑やかだねぇ」
キビ団子をひとつ口に入れた阿修羅が目を細めながらその様子を見ている
「…賑やか過ぎるようにも思えるけどね」
ひょいぱくひょいぱくと軽快なテンポでキビ団子を口に運びながら矜羯羅が呟いた
「…いお茶ー」
そんな矜羯羅に制多迦が麦茶を手渡し受け取った矜羯羅がお礼といわんばかりに無言で制多迦の口にキビ団子を押し込んだ
ヘラリと笑ってモゴモゴキビ団子を制多迦が頬張る
「制多迦様と矜羯羅様と阿修羅はお供?」
「もうその話題はえーっちゅーん;」
いまだ桃太郎の話を引きずっていた鳥倶婆迦に京助が突っ込んだ
「で?」
三箱あったキビ団子が綺麗に空になったところで阿修羅が持っていたコップをテーブルに置いた
「で…って…で?」
南が中島を見て言う
「で…デオドラント」
中島が京助の方を見ながら一言
「ト…ト…トンヌラ」
そして京助が南を指差す
「らー…ラー…ラー油」
南が今度は鳥倶婆迦を見た
「何?」
「…ナンデモアリマセン;」
いつもと変わらぬあのお面の顔で見上げられた南が目をそらした
「さっきオライがどうの言ってなかったけ?」
テーブルに肘をつきソレで顎を支えた阿修羅が聞く
「あのねーあっくんいちゃんって昔髪長かったの?」
悠助が無垢な笑顔で聞くと矜羯羅と制多迦がピクンと微かに動いた
「おー…よぅ知ってんなー悠助」
にーっと笑って阿修羅が言った
「そうやんきになー…昔はタカちゃんや緊那羅より長かったんきに…あー…かるらんくらいだったかのー」
「…想像つかん;」
阿修羅の話を聞き少し何かを考えたあと三馬鹿と京助が顔の前で手を振った
「でねそのときのあっくんにちゃんが…」
「悠助その話…誰からきいたの?」
矜羯羅が悠助の肩を掴んできくときょとんとした悠助が矜羯羅を見上げる
「え…? どうしたのコンちゃん…?」
首をかしげながら悠助が聞き返す
「…ようはアレけ…オライがなんで髪切ったっちゅーの知りたいんきにな悠助は」
阿修羅が静かに言う
作品名:【無幻真天楼 第十三回】ふわふわり 作家名:島原あゆむ