【無幻真天楼 第十三回】ふわふわり
「…何なんだろうな」
普通ではないとは頭の中でいつも思っていた
でもソレがいつの間にか普通となっていた
でもやっぱり違っていた
でもやっぱり…
「あー…わけわかんねぇ…」
血は赤いのに
感触だって同じだし
感情だってあって
ただちょっと変わってるだけだと
外国の人と同じようなレベルで考えていた
文化が違うとかそういうレベルで
でもレベルが違っていた
天井にかざした手をただじっと見る
「こう考えてる俺だって…坂田達とはまた違って…緊那羅も…みんな違って…俺は…」
かざした手を握り締めてはまた開いてを繰り返す
同じに見えて違う
この世の中全部がそうなんだと
同じものはひとつとして存在しない
「なんか…怖ぇえや…」
今までこんなこと考えたことなかった
考えると考えるほど【ひとり】になっていくような気がした
悠助を起こさないようにゆっくりと後ろに倒れると壁にかけられた時計が見えた
「…【時】…」
時計が刻む【時】と自分がかかわっている【時】
同じ【時】でも違う【時】
「…怖ぇえ…な」
ハハッと笑って腕で顔を隠す
「あー…怖ぇえ…」
【時】を刻む秒針の音が休むことなく聞こえていた
作品名:【無幻真天楼 第十三回】ふわふわり 作家名:島原あゆむ