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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十三回】ふわふわり

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『いつかわらわと一緒に戸の向こうに行ってくれますか?』

 『わらわの望みは…貴様の口から貴様の声でわらわの本当の名前を呼んでくれる事…ただそれだけなんです』  



           『…手…繋いでもいいですか…』

 

              『あったかい…』


コツ…ン…

床に落ちた小さな鈴は音色をたてることなく転がって阿修羅から離れる
「…なん……ッ…」
竜の方に額を押し付け阿修羅が震えた声を出した
「名前呼んだだけなんきに…ただそれっぽっちの望み…それだけの…それすら…」
だんだんと強くなり自分の腕に食い込む阿修羅の指を竜はただ見ている
「一回…一回しかオライは…あいつは何度もオライの名前呼んでたんに…オライはまだい…ッ…」
食い込んでいた指から今度は力が抜けていく
力なく床に座り込んだ阿修羅を竜が見下ろしそして息を吸う
「…上は絶対…」
ボソっと呟いた竜の言葉に阿修羅の肩がピクッと動いた
「…上…上か……ハッ…ハハハハハハハッ」
阿修羅がうつむいたまま笑う
「…落ち着け」
「落ち着け…?」
静かに言った竜を阿修羅が眉を吊り上げた形相で見上げる
「落ち着け…ねぇ…ッハハハハハハハ…あ~あ…」
阿修羅がゆっくりと立ち上がり転がっていた小さな鈴を拾い上げた
「…上は宮なんきにな」
「落ち着け」
震える声で聞いてきた阿修羅に竜が再び同じことを言った
「…名前呼んだときのな…顔…忘れられないんきに…あの顔な…」
阿修羅が自分の髪を数本引き抜きそれに鈴を通し首に下げる

シャラン

「…もう一回みたいんけぇの…」
阿修羅がゆっくり振り向く
その顔は笑っていた
「オライ達にとっては日常的なんにな…名前呼ばれる事…それがあいつには特別だったんきにな…オライも…照れんでもう一回…もっと呼んでやればよかったんにな…ッ----------…」
最後のほうの言葉をかみ締めた阿修羅の目から涙が流れる
「阿修羅!!!!」
竜が叫ぶのとほぼ同時に阿修羅が走り出した