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麻子

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その朝も電子音が私を心地良い眠りから覚ました。
布団から ぬうっと手を伸ばし、ベッドの横にあるテーブルの上の銀色スチールの
目覚まし時計を止めた。
思いっきり腕を伸ばし、呻くような声とともに伸びをした。
「あたぁ……」
少しこめかみが痛い。
原因はわかっている。昨夜飲んだお酒のせいだ。
もう少し付け加えれば、三年と二ヶ月勤めたデザイン関係の会社を 昨日を最後に辞め、
その送別会を会社の友人が開いてくれた。
居酒屋、クラブ、さらには、カラオケで盛り上がったのだ。
帰宅は、午前一時。
残業でしばしば十一時、十二時近くになることを思えば、遅いお帰りではないと
自分では思う。
今日からは、自分の時間。
気を緩めて酒を飲んだ翌朝くらい、目がとろけちゃうほど眠っていれば良いものを
いつもの手の癖でしょうか……しっかり目覚まし時計のスイッチをセットオン。
正直者で律儀な目覚まし君は私をいつも通りの六時五十分に起こしてくれた。
体をベッドに横たえたまま、天井を見つめて、ひとつ深呼吸。
今日の予定を考えてみる。
考えているのか、昨日を思い出しているのか、ぼんやりしていた。
ふと、時計を見る。
十分経っていた。
いつもながら朝は、時間が駆け足しているようだ。
私は、布団を捲り、ベッドから起き上がった。 
全身で伸びをしたり、首をコキコキと左右に動かしてみたり、軽くストレッチ。
これをするだけで体がすっきりするように感じる。
もうガウンを羽織らなくても寒くはない。
私は、朝の、誰しもが行くだろうトイレに入る。
カタカタカタ……
トイレットペーパーを使う目安はどれくらいなのだろう。
大きなお世話!変な疑問と笑われるかも知れない。
だけど、何も考えることのない時には、ふと思うことがある。
トイレの次は、洗面所へ行く。
毎朝の順路になっている。
鏡に 今日初めて見る自分の顔が写る。
お酒のせいもあるのだろうか、顔がやや浮腫んでいるようだ。
「ぶすっ!」
言ったからといって、ずっと付き合っていかなくてはならない大切な顔。
だけど、そのひと言で『さあ、どう美しくなろうか』と精神的緊張が生まれる。
いつもより数回多く顔をひたひたと洗った。
心持ち頬が引き締まった気がする。
私は、冷蔵庫の中から 牛乳の紙パックを出すと、いつものグラスに注ぎ入れ、
ひと口飲んだ。
そのひと口分だけ注ぎ足し、紙パックを冷蔵庫にしまい、ソファーに腰を下ろした。
作品名:麻子 作家名:甜茶