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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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「また殺しに行くんだよ」
「恐ろしいねぇ。早く争いなんて終わらせてほしいもんだよ」
「あの子が産まれてこなきゃ、きっとこの世界も争いは消えただろうに」

「あの子の母親は、[ゴデ・オ・オンデ]を口にしたんだろ?それで突然変異に……」
「そうだよ、あのニズホッグの血で出来た氷の宝石だよ」
「お爺様もよく承諾したねぇ……司法神なのに」
「ばかだね承諾してないから隔離されてるんだろ?お爺様も末恐ろしいと」

「それにしても[対狼一族専属特殊兵器]なんて、この世界に必要あったのかねぇ」
「わしらもいつ殺られるかわからないよ?」

 鉄格子の向こうには、腰の曲がった老人たちが、こそこそと話をしている。
 少年はそんな会話も気に留めず、廊下の先にある大きな扉まで行くと、手も触れず扉を開けた。


 そこにはたくさんの武装された男たちが、血だらけになって倒れていた。

「ニズホッグを呼べ。このままでは魂まで消滅するぞ」
 少年がそう言うと、傷だらけだがまだ動ける兵士たちが、びくびくしながら倒れた兵士を脇へ運ぶ。

 ところが別の兵士が、少年の前に跪(ひざまず)く。
「だっ……駄目です!ニズホッグを……呼べません!」
「なんだと?」
「ナーストレンドでフェンリル一族に止められているようです!」
「やっぱり……また魔狼か……」

 そう言って、少年はバサリという音と共に、黒い羽根の翼を背中に現す。
 跪いていた兵士は逃げるように立ち上がり、恐る恐る確認を取る。
「どっ…どうなさいますか!?」
「先にナーストレンドに向かう」
「はっ」