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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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「どうしよう……まさか!彼女にフィルグスの封印を盗られた……?」
 フィルグスの封印を奪われたことでどうなるのか、今の私にはわからない。だが[あの姿]が尋常でないことぐらいはわかる。なのに今の私にはどうすることもできない。
 私はその冷たい岩の床に座り込んだ。

 
 数時間、いや数日経ったかもしれない。私はお腹がすくこともなく、眠くなることもなかった。だが、僅かに光が入るだけのこの場所では、時間の経過が全くわからなかった。

『咲夜……まだ早いんですよ……今出てきたら……』

 ふいに、ミシェルが言っていた言葉を思い出した。
「こういうことだったのか……」
 私は今までにないくらい後悔していた。
 
 今頃ミシェルはどうしているだろう……
 雄吾は?父さん、母さん、兄貴……皆どうしてるのかな。
 きっと心配してるだろう。
 私はこのままここで誰にも気付かれず、死んでゆくんだろうか……
 彼女もこうしてずっと、泣いていたんだろうか……?

 考えていたら涙が次々と溢れ出てくる。
 私はずっと静かに泣き続けた。


『女の涙は嫌いです』ミシェルはそう言ってたっけ……
 その理由、今度会ったら聞いてみようかな。
 いつ会えるかも、本当にまた会えるのかもわからないけれど……


 そう思いながら泣いていると、足元の岩に何か光るものがあるのに気付いた。
 どうやらそれは自分の涙でできた水溜りのようだった。大きさは十センチほどだろうか。
「水中なのに、水溜り?」
 不思議に思い、その光る水溜りを見てみた。