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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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 揺れる水溜りに、何かが見える。
 人……?何か話している。
 私は急いでその水溜りに顔を寄せた。

「雄吾……っ?」
 私は勢いでその水溜りに手を突っ込んでしまった。

「うわっ!」
 瞬時にその中の水は大きく膨らみ、私の体を覆いつくした。驚いて手を引いたが、その水はみるみる私の周りに膜を張った。やがて、私の体全てに添うように張るその水の膜に、見覚えのある景色や人が映っているのが見えた。

「おい!雄吾!」
 大きな声で叫んでも、声が届かない。
 だが僅かな可能性を見つけたかのように、私は驚きと喜びでいっぱいになった。

 涙の水溜りで出来たその膜に映る景色が、少しずつリアルに見えてくる。
 自宅のリビングだ。まだぼんやりとしか見えない。


 しばらくして私は、本当にそのリビングのソファーに座っているような、不思議な感覚になった。

 視界にぼんやりと映る背の高い人影は、体格がいい。間違いなく雄吾だ。
《雄吾!うちに来てたのか!何やってんだよ!》
 嬉しさで興奮しながら話す私をよそに、雄吾は何か話している。だが、雄吾の声があまり聞こえてこない。不思議に思い、もう一度叫んでみる。
《雄吾!私は帰ってきたんだよ!》

 何かを話す雄吾は明らかに私に話しかけている。だが、私の声が届かない。
 私は雄吾に手を伸ばそうとした。だが、体が思うように動かない。

 おかしいと思っていると、どうやら私も雄吾と何か話しているようだった。
 

 徐々にその場に慣れたのか、周りのものがハッキリと見え始めた。
 見覚えのあるローテーブル、見覚えのあるオレンジのソファー、見覚えのあるテレビ、見覚えのあるグリーンチェックのカーテン、全て私の家にあるものだ。うちのリビングそのもの。カーテンは閉められ、電気がついている。時間は夜か夕方か……

 私は自分の部屋を見に行こうとしたが、体が全く思うように動かない。それどころか勝手に話し、勝手に動いている。どういうことなんだ……






…【その4】http://novelist.jp/526_p1.htmlへつづく。