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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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 私は渦を巻くその水の流れに飲み込まれながら、鎖をつけていない彼女が海の中を泳ぐのを見た。ひらひらと揺れる白いドレスを着た彼女は、ストレートで栗色の長い髪をしていた。その髪は足元まで延び、そしてその顔は、私ととてもよく似ている。

 彼女の[両腕]は白い羽根の翼になっていた。
 彼女は優雅に、羽ばたくように海を泳いだ。

「アナタのおかげで出られたわ」
 そう言ってチラリとこちらを見た彼女の目は、血のように赤い瞳だった。


「アナタ……知らないみたいだから教えてあげる。ここは深層の泉と言ってね、誰もが内に持っている場所よ。ただ[この泉]は特殊だけどね。アナタが[交代]してくれたから、ワタシはやっと表に出られる。大丈夫、ワタシはずっと中からアナタを見ていたから、何の問題もないの。
 そうだ、ワタシの本当の名前教えてあげる。[ラシャ]というの。ふふふ……』

 そして彼女は、また高らかに笑うような歌声を海の底に響かせる。


 私の意識が遠のいていく中、空から僅かな光が微かに差し込む深い海の底で、優雅に泳ぎながらこちらを見て微笑んだ彼女は、まるで【白い悪魔】だと思った。