小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

~双晶麗月~ 【その3】

INDEX|22ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 

「アナタ……ワタシを出してくれるの……?」
「うん!出よう!こんなとこにいちゃダメだ!」
 私はそう言って力いっぱい岩を押した。山積みになった大きな岩はピクリとも動かない。だが、私は彼女をどうしても出してあげたいと思った。

「ふふふ……そんなことしても出られないわ」
「え!?じゃ、どうやって……」
「手を出してみて?」
「手を?でも結界が……」
「そんな簡単な結界、壊せるわよ」
 そう言って彼女は私の方に手のひらを伸ばす。私も言われるがまま彼女に手を伸ばす。
 私たちは結界の膜を挟んで、そっと手を合わせた。

 すると私の周りに張られていた結界が、激しく火花を散らした。
「あっ!ヤバイって……!」
「離さないで!」
 そう言った彼女の手のひらからは、血が滴り落ちていた。


「やめろ……!何してんだ!」
 私はすぐに手をひいた。
「大丈夫よ」
 彼女がそう言うと、徐々に火花が収まっていった。

「ほら。手を出してみて」
 恐る恐る手を伸ばすと、張られていた結界は消えていた。驚いていた私を岩の隙間から見た彼女は、くすくすと笑いながら血の垂れた手のひらを赤い舌で舐めた。

 なに……?この子……

 私は鳥肌が立った。

「さぁ、手を伸ばして」
 そう言いながら伸ばした彼女の手のひらは、垂れていた血も消え、傷一つ残されていなかった。

『咲夜……まだ早いんですよ……今出てきたら……』
 ミシェルの言葉が木霊する。

 私は……この手を取っていいのだろうか……


 しばらく躊躇(ちゅうちょ)していると、また悲しい歌声が聞こえてきた。まるで催促をするかのように歌うその声で、私はまた胸が痛んだ。本当に悲しくて苦しくて……
  
「ワタシをここから出して…」
 歌をやめ、そう言った彼女の言葉は、何かの呪文のように聞こえた。


 気付けば私は右腕を伸ばし、彼女の手を取っていた。