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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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 私は結界に触れた指先を押さえ、しばらく考えていた。


 するとまた悲しい歌声が海の底に響き渡った。私は悲しみで胸が痛んだ。

「あなたがずっと私を呼んでいたんだね?あなたは……何をそんなに悲しく歌うの……?」
 私の問いに返事もないまま、歌声は続く。
「私は胸が痛いよ……これは……あなたの悲しみ?苦しくて苦しくて……」
 私は泣きそうな自分を必死で抑えた。
「どうか私に話して。私では……なんの解決にもならないかもしれないけど……」
 そう言いかけると、歌声はピタリと止まった。

 そして彼女は話し始める。

「ワタシはずっとここにいるの……この暗くて冷たい海の底で……」
「どうしてここにいるの?どうして鎖に繋がれて、こんな風に積まれた岩の中にいるの?」
「さぁ……どうしてかしらね……」
 彼女は岩の隙間から白い腕を伸ばすのをやめた。

「これ……何か知ってる?」
 そう言ってその岩の隙間から彼女が出したのは、白い羽根で覆われた翼の先だった。
「……なんで!?」
 その翼は彼女の左肩から伸びているようだった。そう、それは以前ミシェルが私の右腕に触れた時と同じ………

「出よう!こんなとこにいないで!」

 私は思わずそう言っていた。