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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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◆第9章 白の脅威◆


───静かな海の底で、その歌は聞こえた。それはとても澄んでいるが、私の中の感情を増幅させるような、そんな歌声だった。
 私は再びあの積まれた岩の元へと進む。近付けば近付くほど、悲しさが私を責めるようで、胸が苦しかった。

 私が岩の前まで来ると、その声は歌うのをやめた。そして僅かなその隙間から、白い腕を静かに伸ばす。その腕を囲う白い袖口は、花が咲いたように広がり、ゆらゆらと揺れていた。


『咲夜……まだ早いんですよ……今出てきたら……』
 ミシェルの言葉が頭を掠める。 
 私は躊躇(ちゅうちょ)した。


「助けて……」
 中から聞こえるその声に、私はどうしたらいいか迷っていた。

「この手を取って……ワタシを出して……」
 伸ばされた白い腕には頑丈に鉄の輪が付けられ、そこに繋がる鎖は下へと垂れ下がる。
「この鎖はどうすれば……?」
 私はそっと鎖に手を伸ばした。
 だがその瞬間。

「……痛っ!」
 急に指先に電気が走り、私は伸ばした手を引っ込めた。見ると、私の周りに張られたままだった結界が、火花を散らしていた。
「ダメだ……結界が……」
 
 あのメモには結界の張り方だけが書いてあった。
 だが、結界を解除するにはどうすればいいんだ…
 知らないうちに張っていた結界……どうやって張ったのかもわからないのに……