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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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 その後、改めて部屋を見渡すと、妙なことに気付いた。
 床を見ると、私がいる所から半径一メートルくらいの所まで、ガラスの破片が一つもない。砕かれた家具の破片も私の近くには何も落ちていない。そして私はケガ一つしていない。割れたガラスがあんなに飛んできていたのに……もしかしてこれが[結界]?


 だがしばらくして、胸の鼓動が落ち着いてもいないのに、また別の異変を感じた。
 右肩の痣の辺りからズキズキと痛みが走る。それと同時に物悲しい感情が胸の奥から沸いてくる。私はあの海底にいた彼女のことを思い出した。

 これ…[フィルグスの封印]って言ってたっけ……彼女腕を見せて欲しがっていた……これがフェンリルに反応しているんじゃないなら、もしかしたら彼女からの信号かもしれない。


『咲夜……まだ早いんですよ…今出てきたら……』
『新月ではまだダメなんです……月が満ちるまで……次の満月まで待たなければ……』
 ミシェルが言っていた。
 まだ早いって?今出てきたら……満月まで待たなければどうなるって言うんだ……
 

 私はこの悲しみに打ちひしがれた感情を押さえられず、自らの意識をあの海底へと向けてしまった。