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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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 ミシェルは再び立ち膝のまま机の上を拭きながら、口を開いた。
「フィルグスは本来、人を守護する守護獣です。
 あなたの本にも載っていた、守護獣[フィルギャ]は女性形で、その姿を見る時守護されるものは死期が近付いていると言います。ですが[フィルグス]は男性形で、守護のみをメインとして動いています」
 私はその言葉を聞いて、少しほっとしていた。


 だがミシェルは言葉を続ける。
「ですが……今はフェンリル一族の支配下に収まっています」
「支配下!?どういうことだよ!」
「言いにくいのですが……」
 そう言って、ミシェルは拭き終わった机の上に、濡れた布巾を置いた。

「フィルは……[フェンリル一族の意図]で、あなたのそばにいたということなんです」
「な…んだって!?だってフィルは私が小さい頃からいたんだよ?そんなはず……!」

「実はフィルは、あなたが[この世界(ミズガルズ)]に生まれる前から、あなたの[守護]をすることが決まっていたんです」
「うそ……だろ……?」
「もちろんそれは、[フェンリル一族の意図]あってのこと」
「その意図ってなんだよ!なんのために!」

 ミシェルはしばらく言葉を詰まらせた。
「僕は……これ以上あなたの涙を見たくありません」
 そう言ったミシェルは、ベッドに座る私をふわりと抱き寄せた。

「何言ってんだ……涙って……」
 私はミシェルの腕の中で、呆然としていた。