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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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 私は心拍数がどんどん上がっていくのを感じた。だがそれを抑えられない。
「ミシェ……」
 恐怖で名前を呼びそうになった。だが私は我に返り、口を閉じた。

 私一人でなんとかしないと……でもどうすれば………


 とりあえず私は机の下に隠れた。まだ右腕は何も反応がない。もしかしてフェンリルが近くに来ると、右腕が痛むのかと思っていたのだが……家の窓は、ビリビリと音を立てている。近付いているのか……声を出さないよう、見つからないよう、私は息を潜めた。
 すると、急に家の中のいろんな反応がピタリと消えた。私はフェンリルが通り過ぎたのかと、恐る恐る窓の外を見た。

「あっ……!」
 私は道路と家のフェンスを跨いでいるフェンリルと目が合ってしまった。


 その瞬間雷鳴が轟(とどろ)き、嵐のような激しい音と共に、窓ガラスが粉々に砕け散った。外から中へと飛んでくるガラス。私は思わず頭を抱え、しゃがみこんだ。
 フェンリルは割られた窓から部屋の中に顔を突っ込み、カーテンを引きちぎった。そして大きな口を開け、手当たり次第に噛み砕いていく。全ての家具が砕かれ、その破片は強い風に巻き上げられる。私は震える肩を押さえ、部屋の隅に体を寄せた。

 フェンリルは、散々部屋の中を掻き混ぜた後、部屋の中を見回し、またゆっくりとどこかへ歩いていった。私はそんなフェンリルの行動を不思議に思った。

 フェンリルは私を狙っていたんじゃないのか?

 私はその場に座りこんだ。そして、嵐の後のような自分の部屋を見て、ぞっとした。