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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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 どうやっても結界が張れた気がしないまま、すでに辺りは暗くなっていた。
 なぜかお腹は空いていない。きっと家に帰ってもミシェルは帰ってきていないだろうと思いながら、家に向かった。住宅街の各家々からいろんな食べ物の匂いがする。夕飯の準備に追われているのだろう。だが、なぜか食べたいという気持ちにはならなかった。
 
 家に着くと、案の定明かりが付いていなかった。

 いつもなら明かりの付いた家で、ミシェルが『おかえり!』と言ってくれる。
 『夕飯出来てますよ』と言い、私をダイニングへ促す。
 私が食べ終わるまでいつも見ていてくれる。
 私が夜遅くまでテレビを見て笑っていると、『早く寝ないと明日遅刻しますよ!』と言う。
 まるで、母親みたいだ。


 でも…今この家にはそのミシェルはいない……


 私は夕飯の準備もする気になれず、部屋に入った。部屋の窓から外を見ると、月が見えた。今日は上弦の月。もうすぐ満月……
 ミシェルは……今どこで何をしているんだろう……

「くっしゅん!」
 私はタンスの中からバスタオルを出し、頭を拭いた。

 風邪ひいたかな……
 きっと、こんな時、温かいスープでも作ってくれるんだろな……

 私はずっとミシェルのことばかり考えていた。


 その時だった。静かなはずの家の中が、なにか、ザワザワと音を立てる。壁という壁が何かに反応しているように、ピシピシと軋む。部屋に置かれた家具は微かに揺れ、机の上のペンが床に落ちる。
 私はまたあの大きな気配を感じ、急いで窓の外を見た。びっしりと建てられた家々の間に、大きな黒い雲の塊のようなものが見える。その雲の隙間から何かが見えた。

 あれは……フェンリル!?何か探している?まさか……