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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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「そんな……泣くなよ……そんなにお前が泣くと……オレまで泣けるじゃねぇかっ!」
 雄吾は傘を放り投げ、私を強く抱きしめた。
 その勢いで私の傘も大通りの側道に落ちる。

 雄吾の顔を見上げると、オトコのくせにおいおいと泣いていた。


「バカッ!なんでオマエが泣くんだよ!」
 強く抱きしめたままの雄吾の腕の隙間で、私は自分の涙を手で拭い、そう言った。
「だってよォ……お前、いつもクチ悪いくせによォ、こんな風に泣くなんてよォ……」

『女の涙は嫌いですからね』
 私は、ミシェルの言っていた言葉を思い出していた。

「クチ悪いって、ひとこと余分だよっ!これは泣いてんじゃねぇの!笑ってんだよ!笑いすぎて泣いてんの!」

 驚いた雄吾は、抱きしめた手を解き、私の顔をじっと見た。
「バカ言ってんじゃねぇよ。お前、笑ってなんかねぇじゃんか!」
「あっはっはっはっは!……ほら!笑ってるじゃんか!」
 私は無理矢理笑って見せる。

「ハハッ……そんな笑いで泣けるかよ。これぐらいちゃんと笑わねぇと!」
 そう言って雄吾は大きな笑い声を出した。

 私は雄吾の気持ちが痛いほどわかった。


「雄吾……ごめん……。でも……ありがと」
 私は雄吾に背を向けた。

「お前の気持ちはオレが一番よ?く知ってる。まだ半年程度の付き合いだけどよ」
「うん、わかってる……」
 私はそう言って雄吾が放り投げた傘を拾い、雄吾に渡した。
 降り続く雨はさらに強くなった。