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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その3】

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「なんで……なんかあったのか!」
「はァ?だから別に落ち込んでなんかいないって言ってるじゃん!」
 
 そうだよ、別に……雨降ったくらいで落ち込むわけないし。

「だってよォ……お前……」
「『だって』がなんだよっ」

「だって…涙が……」
「……涙?」
 
 そう言われて私は、降り注ぐ雨よりも多く落ちてくるものが涙だと、やっと気付いた。


「おいおいおい〜、何があったんだよ〜。兄貴となんかあったのか?」
 雄吾は制服の袖でガシガシと私の顔を拭いた。
「痛いって!いいよ!ちゃんとハンカチ持ってきてるから!」

 私は涙を隠すつもりで必要以上に下を向き、ポケットからハンカチを慌てて取り出した。その時私が取り出してしまったハンカチは、ミシェルと初めて会った時、ミシェルから渡されたあの白いハンカチだった。このハンカチにはミシェルの術がかけられている。
 そのハンカチを出すと同時に、濡れた地面に茶色くなった花びらが落ちた。

 そうだ……フィルの血の花びらをハンカチに包んだままだったんだ……
 またいつもの癖で、ポケットに入れてたんだな。
 あれからもう半年……もうこんなに茶色くなってしまった……

 手元から全て落ちたその花びらには、さらに雨が降り注ぐ。

「なんだよこの花びら!これって……前に空き地で見た花びらと同じじゃねぇ?茶色くなってるじゃねぇか……なんでお前が……」
「違う!あの時のじゃないんだ」
「だってどう見ても……」
 そう言った雄吾の声は雨音にかき消され、ほとんど私の耳には届かなかった。
 いや、届いていたけど聞こうとしなかっただけなのかもしれない。

 私の涙は、次々と溢れ出していた。