~双晶麗月~ 【その3】
◆第8章 冷たい雨◆
私はミシェルに聞かねばならないと思った。その夢のことも、ミシェルが何者なのかも、それ以外のことについても、聞きたいことが山ほどあった。
だが、家中を探してもミシェルはいない。
いつもなら置いてある朝食もなく、1階のカーテンも全て閉まったままだ。
まさか、昨日のうちに出て行った……?
ただ置いてあったのは、ダイニングテーブルの上のメモ紙だけだった。
そのメモを手に取り、書いてあることを読んだ。
「結界の張り方……?これ……自分でなんとかしろってこと……?」
ここで私が心の中で呼べば、ミシェルは帰ってくるのかもしれないとも思ったが、私はあえてそうしなかった。そして私は悶々としたまま学校へ向かった。
こんな日に限って雨が降っている。
まだ夏だと言うのに雨が冷たい。丘の道を下り、正面に見える海へと降り注ぐ雨は、まるで、助けてくれていたミシェルに腹を立てている私を責めるようにも思え、私は湧き上がる感情の行き場を失っていた。
「よぅ!」
私は坂を折りきった所で、後ろから走ってきた雄吾に声をかけられた。
「あ〜……おはよ……」
「な〜んだよ!はぁ……そんなシケたツラして!雨だからってさ……はぁ……そう…落ち込むなって!」
息を切らしながら雄吾は話す。
「はは……そうだね……」
『そうだね』って?……私は落ち込んでるのか?
雨だから……?
私は自分が今言った言葉に疑問を持った。
作品名:~双晶麗月~ 【その3】 作家名:野琴 海生奈