moonlight(中編)
ネオは笑いながら、ショルダーバックから百均で買ったCDを取り出す。
一見、商品の説明書きが入っているだけの、録音をしていないものに見えるが、
「はい、これがわたしのグループ――moment'sで作ったCDよ。プレハブ小屋で録音したものだから、ちょっと音質が悪いけど」
夏休みの始めに、岩国市内の音楽ホールであった『アマチュア・ロック・フェスティバルin IWAKUNI』で無料配布したものを実緒に渡す。ネオのために一枚とっておいたのだ(無料配布したものは全部売れた)。
「ううん。全然構わないよ、ありがとう。じゃあ、早速」
漫画が置いてある本棚の奥にある押入れから、小型のコンポを取り出し、CDを入れて聴き始める……が、
ズギャギャギャギャーーーーーーン!!
「うわぁーーーーーーっ!!」
「きゃあああーーーーーーっ!!」
部屋中に響く爆音に思わず、声を上げ、耳を塞ぐネオと実緒。
家が崩れそうなぐらいの暴音だ。
「ちょっと、ちょっと! なんでこんなにボリュームが大きいのよ~っ!」
「ごめ~ん! 今、下げるね!」
耳を片方塞ぎこみながら、実緒は音量を調節する。
適正なボリュームへと戻る。
「ふぅ~」
とネオの口から息が漏れる。
「ごめんね~」
もう一度謝る実緒。
「まったくよ」
適正な音量に戻ったところで、改めてmoment'sの音楽を聴きはじめる。
一つ一つの曲ごとにネオの解説を受けながら、実緒は彼らの楽曲を楽しんだ。
有名なプロのアーティストのアップテンポな曲がうまく再現されており、moment's独自の楽曲も、彼らが伝えたい『前進』というキーワードのもと、風を駆け抜けるような熱い曲が溢れていた。
そして、ナル男こと、絢都がメインボーカルのハードロックな楽曲が流れたときは、
「こいつ、ものすごいナルシストなのよ」
「そうなの? こんなに良い歌声なのに」
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ