moonlight(中編)
螺旋状にできた階段を、彼女の後に続いて上っていき、粘土で『みおのへや』、と書かれたルームプレートが飾られている部屋へと入っていく。ニスでキラキラと輝いており、小学校で作った感が溢れている。
中へと入ると、それは華やかなものであった。ちゃんと整理されており、奥にある桃色カーテンの左隣にはタンスがあり、その上には、綺麗に並んだクマやパンダなどの可愛いぬいぐるみたちが置かれている。その反対(扉)側には、自分の机が置いてあり、教科書などがきちっと整理されている。そして、その隣にある本棚には漫画(もちろん『ミラーマジック』が全館揃っている)と絵の入門書が置かれている。
何とも自分の趣味全開で、綺麗でファンシーな部屋である。古びた家がリフォームで様変わりしているみたいだ。
「すご……わたしの部屋と全然違う」
ネオは部屋のキラキラ度に思わず驚嘆する。
「そう? 昨日までぐちゃぐちゃだったから、直しただけだよ」
謙遜する彼女に、ネオは首を左右に振り、
「いやいや、友達が来るっていうのに片づけるなんてすごいって。わたしなんか、音楽雑誌やら、楽譜やら、ぐちゃぐちゃに置きっぱなしでも、平気に中へ入れるもん」
「そ、そうなんだ……」
それもどうかと……、と思いながら実緒は微苦笑してみせる。
「それよりも、例のブツを持ってきたよ。……あっ、座ってもいい?」
「いいよ。はい、元気の源」
二人は床に敷かれたブラウンのカーペットの上に座り、実緒はボトルにある氷たっぷりの冷たいお茶をコップに注いで、ネオに渡す。
「ありがとう~」
ネオはもらったお茶を、一気にグイ! っと飲み干す。
乾ききった喉が一気に潤う。命の水ならぬお茶を飲み下し、一言。
「ぷっっっはーっ、生き返ったーーーーっっ!」
ビールで疲れを流し込むサラリーマンのように、大げさに態度を取る。この瞬間だけ、ネオは間違いなく中年のオッサンだ。
そんなオッサンに実緒は、
「じゃあ、もう一杯いりますか? ご主人様?」
とメイドのような姿勢で、ネオをもてなす。心を許した友達には、こういう冗談も言えるみたいだ。
「うむ。いただこう……って、わたしはアキバ系の男どもか!」
すかさず、実緒にツッコミを入れ、お互いに笑い合った。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ