moonlight(中編)
「だれがナルシストっスか! じゃあ、先輩はジャイアニズムむき出しのバカゴリラっスよ!」
「なにを~っ!」
真正面からのにらみ合い。
「はぁ~、なんでこの二人はいつもいつも……」
未知流はくしゃくしゃに髪をかきながら、醜い言い争いを永遠に続けそうな二人の後ろ頭に手を当て、
「いいかげんにしろっ!!」
ゴチーン! と二人の額をぶつける。
「いったぁ~」
「う~」
とネオと絢都は赤くなった額を擦る。
「毎日、毎日ケンカばっかりして……少しは仲良くやらんか!」
「は~い」
「すんません」
「まったく……」
未知流は呆れたように額に手を当て、首を横に振る。「あたしの身にもなれ!」と動きで表す。
「それにしても……、」
と未知流はネオを方へ顔を向け、
「ネオ、その似顔絵、誰が描いたのよ?」
ようやく『本題』と言える質問をネオに訊ねる。
「誰って、みっちぃも知っているじゃない。実緒よ、竹下実緒(たけしたみお)!」
「あ、ああ~……あんたがたまに昼休みに話をしている、影の薄そうな、あの子のこと?」
「影が薄いって失礼よ!」
友達をバカにされて、顔だけ前のめりに未知流を見つめる。
「悪かったよ……あの子とあんなにフレンドリーになるとは思わなかったからさ」
あんな事があって、仲良くなっていることに疑っていた未知流は、改めて彼女の人付き合いの良さに感心する。
本当に人付き合いが良いのだ。普通、入学して間もない頃は、同じ中学校の顔見知りがいるならともかく、どことなくぎこちなくて、「あの人は相性がよさそうだな」と探りながらクラスメイトに話しかけていくのが世の常だ。しかし、ネオは物怖じすることなく、クラスメイトの女子たちと積極的に話の輪に入り、交流を深めていった。それは当時、一緒のクラスだった未知流も例外ではなかった。彼女のように、恐そうなイメージを持つ学生にも話しかけていた。そのおかげで、未知流にも彼女を通して友達がたくさんできた。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ