moonlight(中編)
そして、
バッコ――――――ン!
――ネオの頭にタンコブができた。
「いった――――――い! 何すんのよ、みっちぃ~!」
コブの部分に手をあて、左側の目を瞑って痛みを噛みしめる。
「なーにが、何すんのよ、だよ! 連絡を寄越さず、10分も遅刻して! えぇ!?」
ったく! と腕を組んで、右斜め上に顔を向けてネオを見下す。
これじゃあどっちが部長なのか分からない。
「ほんとッスよ先輩! 今日から実践だっていうのに、迷惑かけすぎ……」
呆れ口調で女王の発言に同意する絢都。
何よ、ナル男のくせに! と文句を言いたいところだが、未知流様が壁を作っている以上、文句を言えまい。メンバーに迷惑をかけたことは事実だ。
というわけで、素直に、
「ご、ごめんなさい」
状況を理解して、ペコッと一礼。しっかり背筋を伸ばし、斜め45度をキープ。
「よろしい」
未知流様の機嫌が治まる。
こんなんじゃあ、後輩には「名ばかり部長」と思われそうだ。もう思っているかもだけど。
「で、こんなに遅れた理由は何? まさかあんた、素で遅刻したんじゃないだろうね? 事と次第によっちゃあ……」
右手の関節をポキポキ唸らせる未知流。
本気の彼女を見て、焦りながら両手を前へ出して、
「待って、待って! 二度目は嫌だからね! ……えーとね、描いてもらってたのよ」
「何を?」
「えっとね、確かここに……」
鞄を開き、ネオはガサゴソと探す。
「あった!」
クリアケースから一枚の用紙を取り出し、
「じゃーん!! どうよ!!」
バーン! と自慢げに一枚の絵を三人に見せる。
ポニーテールを揺らし、穏やかな表情で笑っている女性。その表情はまるで太陽みたいだ。でも、どことなーく誰かに……。
三人は、息ピッタリに絵とネオを見比べる。
「これ、ネオさん、ですか?」
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ