moonlight(中編)
そんな日々が毎日続き、気が付けば九月の中旬。
紅葉が少しずつ色つき始めるこの季節。総合祭へ向けて、学生たちのテンションも日に日に高くなっていく。
今宵も沈む夕日をバックに、演劇部の活動を終えたプレハブ小屋で、せっせと機材を準備し、文化祭に向けた活動が始まろうとした……のだが、
「ネオ先輩、遅いっスねぇ~」
呆れ顔で、絢都は呟く。
「前もそんなことがあったような」と巧は絢都の呟きに続く。
三人は、何の返事もないネオを待っている。
今日は、総合祭でやる選曲を一通り音合わせする日。そのため、ボーカル兼リーダーである彼女がいないと練習にならないのだ。
活動開始の時刻から三〇分が経過している。
「あれでも二人の先輩でリーダーで創部者だってのに……自覚がないのかねぇ~」
はぁ~、と未知流がため息を漏らす。
「しょーがない。携帯にかけても連絡も来ないから、三人でさっさと、」
と言いかけたそのとき、
「みんな――――――っ!!」
――外からネオの大声が聞こえてくる。
そして、
ズザアァァァ――――――ッ!!
急ブレーキで砂埃が巻き起こる。
猛ダッシュでここまで来たことをアピールして、お騒がせ娘が未知流たちの真正面に現れる。
そのまま靴を脱ぎ、
「ごめ――――――ん、遅くなっちゃった」
涼しげな顔で、ネオはすぐさまプレハブ小屋へと入っていく。
「「……」」
「あれ? みっちぃ、絢都、どうしたの?」
冷たい視線で自分を見つめる二人に、ネオは訝しそうに見つめる。巧は冷徹な二人が恐ろしいのか、背中を向ける。
未知流がネオのもとへと行く。その一歩はズシン、とプレハブ小屋全体を揺らしているかのようだ。
「?」
ネオは不思議そうに未知流を見つめる。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ