moonlight(中編)
ハァ……ハァ……。
あの長い坂を登りきり、ネオは実緒の家へと辿り着いた。
学校から走ってきたおかげで、あらゆるものが汗で冷たく染み渡っている。
ネオは家の前に自転車を置き、すぐさま玄関前にあるインターホンを鳴らす。
全ては自分の想いを、「あんなゴミとは違う!」ということを伝えるために。いつでも実緒の味方だと伝えるために。偽善者なんかではなく、いつも心から親友のことを想っていることを。バカにしたことはこれっぽっちもないことを。
親友の手をとって、暗い暗い闇の海から引っ張り出したい。
そんな気持ちがネオを急かせた。
何度も何度もインターホンを鳴らす。実緒が出てくるまで。
すると、中から足音が聞こえてきた。
そして、
ガチャ!
扉の向こうから、縦縞模様の緑色のパジャマを着た実緒が、恐る恐る顔を出した。その姿は、『恐怖』という塊が、ウイルスのように全身を蝕んでいるみたいだ。
「実緒っ!」
実緒という存在を確認できて、ネオの表情は明るくなる。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ