moonlight(中編)
ある日の夏の放課後。親友の挑発に乗り、ネオは教室で彼女とその悪友二人と対峙した。
ネオはあくまで強気な態度で、
「一体、何のようなの?」
と親友に問う。
親友はそんな彼女の態度を鼻で笑い。
「ネオ、あんたがアタシらにあーんな態度を取ることに、いらいらしちゃったんでねー殴ってやろうかと思ったのよ」
『あーんな態度』とは恐らく、不登校もせず、あの悪罵(あくば)にも動じないことを指すのだろう。
「あんたのような正義感を持つヤツは、ほーんと嫌気がさすよ。何度も自分を偽って、優しく接しやがってさぁ、ほんと……」
ガン! と教室のドアを叩きつける。
「ムカつくんだよ!!」
とネオに向かって罵声を浴びせる。
「何よ、言いたいことはそれだけ?」
「何?」
ネオは自分の方がよほど格上だと、顔を少し上に向け、
「自分を偽ってる? バカ言わせないでよ。わたしは、あんたには本心で接していたわよ! いつもあんたのことを大切に想っていたわ。 あんたもあんたよ! 何で言ってくれないのよ!? いつだって力になってあげたのに! わたしたちは親友でしょ!? この関係を壊そうとしていることが分かっているの!? バッカじゃないの! 親友として何度も言うわ。こんなのあんたじゃない! こんなの絶対に間違っているって! わたしの家族も絶対にそう言うわ! わたしのことを偽善者って言うのなら、あんたなんか、偽悪者よ! あんたの悪人面はこれ以上見たくない! だから、いつもの、」
「うるさいっ!!」
「!」
ネオの訴えを『うるさい』の一言で消去する。
親友は、顔を俯き、身体を震わせながら、
「それが独りよがりなんだよ!! アタシのことを親友と言うくせに、何も気遣ってくれないじゃないか! どこが『大切に』だよ! 目障りなんだよ!
「違う!」
「違わない! ……もういい。 おまえなんか、おまえなんか、アタシの気持ちが分からない、親友ぶっているおまえなんか……、」
自分の孤独な気持ちが――
「やってしまえ!!」
ネオに襲い掛かる。悪友二人に仕向けるその姿は、まさに善を裁く死神だった。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ