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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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moonlight(中編)

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 母親の言いつけで善悪の線引きがはっきりとしていたネオは、「こんなの間違っている!」と抵抗し、親友に、
「他人が見ないところで悪さをするヤツほど、『卑怯』という相応しい言葉はないわよ!」
 と必死に訴えかけた。同時にここで自分と彼女の関係を崩してはいけないとも思った。誰かが見ないと、第二、第三の者が傷つけられると感じたからだ。ちゃんと正しいことを言える人間がいないと、なくなるはずがない。
 ずっと一緒に、笑ったり、泣いたり、助けあった親友だから届くと思った。
だが、
「そんなの知るか! やれ!」
 親友には届かなかった。
「!」
 親友の命令で、友人二人に手を掴まれ、鉛筆を無理矢理握らされてしまう。彼らによって、「消えろ!」とか書かされてしまう。それだけはいやだ!
「やあっ!」
 ネオは机に書く瞬間、右肩方にいる親友の友人の腕を力づくで振り払った。ネオの右手から離れて、左側で動揺しているもう一人の友人の隙をつき、束縛されていた両手を振りほどいだ。
 そして親友に向かって、ネオは勢いよく顔を躊躇なく一発ぶん殴った。
「……」
 これで懲りただろうと思い、ネオは無言で教室を出て行った。親友だから、親友だからこそ殴った……。そう自分に言い聞かせながら。
しかし、翌日。昨日の成敗も空しく、今度は自分の下に牙が向けられた。
 机に「死ね!」とか、「消えろ!」とか、書かれていたのだ。それを書いたのはもちろんあいつ。『親友』という関係を一瞬で崩した卑怯者。ネオは消しゴムで掻き消すが、そのラクガキは毎日続いた。
 それでもネオは我慢し続けた。彼女の良心が再び芽生えることを信じて、我慢し続けた。『親友』だから。それに、先生に話したりすれば、さらに事が大きくなると思ったから。
 彼女も昔は「善」という心はあった。家が近所で、幼稚園のときから小学五年生に至るまで、外でよく遊び、買い物をしたり、時にはケンカもしたけど、すぐに元通りになる、そんな仲だった。
 だが、内に秘めた彼女の心は冷え切っていた。家族による虐待によって。そして、この傷つけられた心を癒すその矛先は、生徒に向けられていたのだった。それは、この事件が終わった後に知ることになる。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ