moonlight(中編)
第二章
夏休みが終わり、残暑の厳しい八月末。
岩国総合高校は他の高校とは違い、大学のように二期制を設けている。そのため、他の高校よりも一週間早めに学校が始まる。
その制度により、学生たちが他の高校をうらやましく思うそんな中、
「ほ、本当、ですか!?」
一階の下駄箱の真上にある教室――生徒会室で、ネオがテンションの高い声をあげている。
「ええ。いつもならオーディションをして決めているんだけど、貴方たちは正式な『同好会』として活躍しているから、特別に免除しよう考えているの。ね、実行委員長?」
とネオの真正面に座っている――生徒会長の右隣にいる、総合祭実行委員長――大山茜(おおやまあかね)に話を振る。
「うん。去年のあのライブからずっと思っていたんだよね。麻倉(あさくら)さん、是非、moment'sのメンバーで総合祭を盛り上げてくれないかしら?」
アカネは首を少し傾けて、ふふ、と微笑みながらネオを見つめる。
その視線にネオは迷わず、
「やりますっ! というか、是非やらせてください!!」
張りのある声で答えた。
自分たちが『目標』にしていたことが、無条件で叶うという思いがけないレアイベントに、ネオは興奮収まりきれない。胸の鼓動が高まる。この部屋から出たら、爆発しそうだ。
「じゃあ、決定ね」
生徒会長が立ち上がる。
「実行委員、いや、生徒会の正式な依頼としてお願いするわね。期待しているわよ」
「はい!」
生徒会長の差し出した手を、ネオはがっちりと握り、固い握手を交わした。
「「「マジっスか!!!」」」
ネオの一報聞いて、moment'sのメンバーの士気は一気に頂点に達した。
自分たちが『特別枠』として、ステージに立ちあがれるのだ。こんなに嬉しいことはない。
早速、選曲を決めて、生徒会と実行委員のご期待に添えるために、彼らは各パートそれぞれ、自分の表現力を最大限に発揮し、他のどのステージよりも最高の舞台にするため、必死に己を磨いて行った。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ