moonlight(中編)
服装を整えたネオによろしい、と先生は言い、
「で、訊きたいことは?」
「あ、あの、実緒……いや、竹下さんに何かあったの?」
「え?」
「いや、このところ竹下さんが何日も休んでいるから、心配で……」
友達のことでやけになっていることが照れくさいのか、先生から視線を外すネオ。
「う~ん、そうなのよね~」
彼女が実緒のことをどう思っているのかを察したかのように、先生はネオだけに聞こえるように口の近くで手を当て、彼女に近づく。
「実はね。先生も竹下さんのことが分からないの。普段、彼女は真面目な子だから、体調不良の時はちゃんと連絡をしてくれるんだけど……電話が来ないのよ。だから、おかしいなと思って」
先生の言葉に絶句するネオ。先生は続けて、
「朝のホームルームや昼休み、そしてこのホームルームが終わった後に、今日で五日目かな。もう、何回もこちらから掛けたんだけど、返事がなくて。明日にでも、竹下さんの家に行こうと思っているのだけど……麻倉さんは何か知らない?」
「い、いえ……」
ネオは顔を俯き、思う。
――なぜ、こんなことになったの? どうして気づかなかったの?
頭の中で、その言葉がぐるぐると回る。
『不安』がぶわっと身体中に、震えとして表れる。
「麻倉さん、顔が青いわよ……」
先生は心配そうな表情を見せる。
しかしネオは、呆然と佇んだまま。
「麻倉さん!」
「!」
先生の大声で、ネオは別世界から帰ったかのように、ハッとして、我に返る。
「せ、せんせい……」
涙で濡れた双眸で、先生を見つめる。
「どうしたの? 大丈夫?」
「は、はい……」
ネオは顔を先生に見られないように、再び下に向ける。
わたしは……彼女の近くに、いたの、に……。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ