moonlight(中編)
とにかく、煮え切らない気持ちでいっぱいなのだ。
「誰にだって、言えない事はある」という未知流の言葉も理解できる。でも、吐き出すことでスッキリすることだってあるはずなのだ。
――本当に黙って見守るべきなのか。
「ネオ、心配し過ぎだよ」
ネオは右肩を優しく叩く未知流を見つめる。
「そんな風に考えることは良い事だけど、言いたくない事まで踏み込んで、『話してよ!』と押し付けたら、竹下さんに嫌われるよ」
『嫌われる』という言葉にネオは、ビクッ! と背筋に電撃が走る。
「そ、そう?」
「そう! 近づ離れずの距離で語り合うのが一番! ずんずん前に出たら、逆に言えなくなるわよ。友達付き合いも駆け引きが重要だよ。時が来れば、そのうちあっちから悩みをぶつけてくるわよ」
「そう言われると、確かに……」
説得力のある未知流の言い回しに、納得してしまう。
「よし! 分かったんなら堅苦しい話はもうおしまい! 活動開始から五〇分も経過して、日も落ちちゃったよ。誰かさんのせいで」
くるっと反転し、未知流は定位置にあるエレキギターのケースを開く。
嫌味っぽく未知流に言われて、
「うっ……悪かったよ……」
そこは責任を感じたのか、ネオは素直に謝る。
「絢都もター坊も、準備をする!」
二人も未知流の指示に「うっス!」、「はい!」といい、自分の定位置で準備を始める。
「今日は、総合祭で歌う楽曲の音合わせをするんだから、本番だと思ってやるように! 特にネオ!」
ビシッと、バスカーズの黒いエレキギターをストラップで吊るして左肩にのせた状態で、右手の人差し指で、ネオの顔を差す。
「え? わたし!?」
思わず右手の人差し指を自分に差す。
いやいやわたし、準備OKなんですけど。
「そう! 竹下さんの事を考えるのはいいけど、リーダーらしくきっちりやってよ……あんたが元気じゃないと、ウチらはなーんにもできないんだから!」
ああ、そういうことか。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ