moonlight(中編)
ふふっ! と笑みをこぼしながら、ネオはウィンクして見せる。
「楽しみにしているよ」
「オレのカッコよさを際立たせてくださいよ」
「……ま、待っています……」
未知流、絢都、巧の順に期待を寄せた。
そのことを実緒に伝えなくっちゃ! とネオは内心思ったが、
「うん……でも、ちょっと……」
いきなり、気難しい顔に方向転換する彼女に、三人は、ん? と目を丸くしながら見つめる。
「まさか、これだけ期待しといて、『実はウソでしたー』とか言うんじゃないんだろうね。エイプリルフールは、とっくに過ぎているんだけど」
と未知流が目を細める。
ネオは慌てて両手を開いて左右に振り、
「ちがう、ちがう! ただ、気になることがあって……」
「気になること……?」
うん、とネオは頷き、普段見せない真剣な表情を見せる。
「最近気づいた違和感なんだけど、最近、表情が暗くなっているような気がして……」
「暗い?」
首を傾げる未知流。
「夏休みは、ものすっごい明るかったの。テンションも高かったよ。ところが、学校が始まってからの昼休み中の実緒は、明るいんだけど、どことなく暗くて……それが、だんだん目に見えてきて……う~ん、わたしの思い違いなのかなぁ……」
ネオは腕組みをして天井を見つめる。
気になって仕方がないのだ。友達のことになるとどうしても。
「こういうときって、わたしから聞くべきなのかなぁ……?」
「大丈夫よ」
未知流がネオの前へと出る。
「そんなに仲良くやっているのなら、楽しいと思っているわよ」
「だといいんだけど……」
「まあ、人間誰にだって言えない悩みの一つや二つはあるもんだよ」
「う~ん、でもなあ……」
今日の昼休みに、精一杯の『作り笑顔』っぽかった実緒の表情が、ネオの脳裏に焼き付く。
誰かに助けを求めているような。初めて会ったとき以上に怯えていた……というかあれは、『自分の世界』に入っていただけだが。
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ