moonlight(中編)
そう。実緒が描いたのは、ネオ、未知流、巧、絢都――moment'sの面々だ。
ネオが夏休み直前に、彼女に頼んで作ってもらったものだ。ネオ以外の三人のことは、ネオが特徴を教えてあげた。完璧に特徴を掴んだものに仕上がっている。
まだ、線画ではあるが。
「これでさらにmoment'sをアピールできるよ! あとはこれをカラーで塗るだけ?」
「うん。白黒で塗ろうと思うけど、どうかな。インパクトがあると思うんだけど……」
「実緒が思うなら、それでいいよ」
「えっ、いいの?」
「わたしは実緒の慣性を信じているから!」
ルンルン気分で答えるネオ。このテンションは、一日中続きそうだ。
「あ、ありがとう」
実緒は、ものすごく喜んでくれたことに一息つく。
そんな彼女を見て、
「もう~、緊張しすぎだよ~」
大げさなんだから、とネオは苦笑する。
「だ、だってぇ~」
じ、自信が、と小さく呟き、ネオを視線から外す実緒。
「もう、卑屈なんだから! いい、実緒!」
ネオは突然立ち上がり、胸を当てながら、
「少しは自信を持ちなさい! 実緒はできる子なんだよ! 少なくともわたしはそう思っている! 卑屈になってたら、前へと進めないわよ! 恐れる必要なんてない!」
仏のように、実緒に道を指し示す。
「わたしだって、同じよ! 不安も少しはあるわ! でも、わたしには認めてくれる人がいた。才能を認められることって、本当にすごいことなんだよ! そういう友達や人が少なからずいるってことは、前に進んでる証拠! わたしはもう実緒のファンだよ! あんたを認めてるんだよ! 応援しているんだよ! 進んでいるんだよ! 頑張ろうよ!」
胸に置いた右手を力強く振り払う。
黙ったまま、実緒はネオを見つめる。本当にこの人は強い、と心からそう思う。そして、勇気をくれる。
「だから、勝手かもしれないけど……わたしは、実緒のことを同じ夢を目指す『親友』で、ジャンルが違っても、『ライバル』だと思っているから。負けないわよ!」
「ええっ!」
作品名:moonlight(中編) 作家名:永山あゆむ