moonlight(前編)
「す、す、す、」
「?」
「すっっっっっごぉ――――――いっ!!」
喉につっかえた言葉を強引に大声で吐き出し、ネオは最大限の驚嘆を露わにした。それは形となって宇宙に向かって飛んでいき、女子学生の髪を暴風のように大きく揺らした。光線を吐く大怪獣のように。
光線が消えた瞬間、時が止まったかのようにシーンとなる。
教室内や廊下を歩いている学生全員が声の主――ネオをじーっと、注目する。
「あ、はははははは、気にしないで」
ネオは笑いながら周囲に平謝りして、その場をごまかした。だって、すご過ぎたのだ。大声以外にどんな表現をすりゃあいいのよ!?
そんなネオを女子学生は、唖然たる面持ちで見つめる。どんな風な言葉を返したらいいのか、分からない。
二人の間に微妙な空気が漂う。
「ご、ごめん」
とりあえず、リアクション芸人並の表現をしてしまったことに、後頭部に手を当てて謝ってみる。
「い、いや、気にして、ない、から……」
女子学生は、ドン引きしたような、驚いたような、わけがわからない表情でネオを見つめた。
……。
ここから、どういう流れにすればいいんだ? このまま立ち去ったほうがいいのだろうか? いや、このままでいたら、彼女の頭に「うざい女子」というイメージが纏(まと)わりつくのでは?
頭の中で思考がぐるぐると渦巻く。
よし! ここは強引に!
ネオは覚悟を決め、左手に持った絵を右手で指を差しながら、
「い、いやぁ~、ホントにすごいよこれ、ほんとに! 生きているみたいでさ! わたし、そんなに絵がうまくないから、羨ましくて! それから、え~っと、え~っと……」
ネオは脳内で必死に言葉を絞り出す。
「あ、そう! リアルにいるみたいで! 大自然に生きている彼女が、風を感じながら、友達? か何か、う~ん、人の温かさっていうのかなぁ? それを感じているみたいな? なんか、わたしがやっているものと似たような感覚っていうか、そんなイメージが沸いてきて……あ~もうっ、そうじゃない! え~と、え~と……」
こーでもない、あーでもない、とネオはぶつぶつ独り言を漏らす。
作品名:moonlight(前編) 作家名:永山あゆむ