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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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moonlight(前編)

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「す、す、す、」
「?」
「すっっっっっごぉ――――――いっ!!」
 喉につっかえた言葉を強引に大声で吐き出し、ネオは最大限の驚嘆を露わにした。それは形となって宇宙に向かって飛んでいき、女子学生の髪を暴風のように大きく揺らした。光線を吐く大怪獣のように。
 光線が消えた瞬間、時が止まったかのようにシーンとなる。
 教室内や廊下を歩いている学生全員が声の主――ネオをじーっと、注目する。
「あ、はははははは、気にしないで」
 ネオは笑いながら周囲に平謝りして、その場をごまかした。だって、すご過ぎたのだ。大声以外にどんな表現をすりゃあいいのよ!? 
 そんなネオを女子学生は、唖然たる面持ちで見つめる。どんな風な言葉を返したらいいのか、分からない。
 二人の間に微妙な空気が漂う。
「ご、ごめん」
 とりあえず、リアクション芸人並の表現をしてしまったことに、後頭部に手を当てて謝ってみる。
「い、いや、気にして、ない、から……」
 女子学生は、ドン引きしたような、驚いたような、わけがわからない表情でネオを見つめた。
 ……。
 ここから、どういう流れにすればいいんだ? このまま立ち去ったほうがいいのだろうか? いや、このままでいたら、彼女の頭に「うざい女子」というイメージが纏(まと)わりつくのでは?
 頭の中で思考がぐるぐると渦巻く。
 よし! ここは強引に!
 ネオは覚悟を決め、左手に持った絵を右手で指を差しながら、
「い、いやぁ~、ホントにすごいよこれ、ほんとに! 生きているみたいでさ! わたし、そんなに絵がうまくないから、羨ましくて! それから、え~っと、え~っと……」
 ネオは脳内で必死に言葉を絞り出す。
「あ、そう! リアルにいるみたいで! 大自然に生きている彼女が、風を感じながら、友達? か何か、う~ん、人の温かさっていうのかなぁ? それを感じているみたいな? なんか、わたしがやっているものと似たような感覚っていうか、そんなイメージが沸いてきて……あ~もうっ、そうじゃない! え~と、え~と……」
 こーでもない、あーでもない、とネオはぶつぶつ独り言を漏らす。
作品名:moonlight(前編) 作家名:永山あゆむ