moonlight(前編)
「あ~っ、もう! どういう風に言えばいいのよ~!」
制御不能で大暴れするポンコツロボットのように、顔を下にして頭を抱え、大混乱している。
そんなポンコツ女子学生が披露した、不器用丸出しの賞賛劇を見て思わず、
「ふふふふふ……」
と女子学生は我慢できなくなり、しまいには、
「あはははは!!」
腹を抱えて大爆笑。
おとなしい割にこんな笑い方もできるんだ、と思いながら、彼女を呆然と見つめる。
「あ、ご、ごめんなさい」
顔を赤くしながら、謝る。
ウチのバンドにいる誰かさんみたいだなぁ~、と思いながら、ネオは腕組みして顔をぷく~っと膨らませて、
「全くよ! すっっっっごい褒め言葉を考えていたのに!」
といじけて見せる。
「でも……結局、思いつかなかったのよ、ね?」
女子学生が冗談っぽくネオに訊ねる。
グサッ! と心臓が射抜かれた音がネオだけに聞こえる。
「ま、まあ、そうなんだけど……って、収拾つかなくなったから、こ~んな展開になっちゃったじゃないのよ~!」
冗談を逆ギレで返す。
「そ、それは、無理矢理貴方が賞賛するから、」
「わたしのせい!? いやいや、あんたも何とか言えばよかったじゃないのよ!」
「そ、そんなの、すぐに思いつかないよ~!」
「はぁ!?」
わあ、わあ。
ぎゃあ、ぎゃあ。
賞賛劇が、収拾つかなかったオチについての議論へと発展していった。
一〇分が経過。
「――だいたい、あんたが『この先どうする?』って投げかけて、わたしが、『何もなかったことにしよ! てへぺろー』って返せば、すぐに次の話題に行けたのよ!」
「そ、そんなの、私には無理だよ~」
「じゃあ、どうすればよかったのよ!?」
路上ですれ違う犬の吠えあいのように、言い争いが続く。二人のやり取りは次第に熱を帯び、廊下中に響き渡る。
作品名:moonlight(前編) 作家名:永山あゆむ