moonlight(前編)
「ん? これ?」
ネオは立ち上がり、絵を彼女の机の上に置く。
「うん……あ、あの、その、ありがとう」
「へ?」
「わたし、絵であんなに大喜びして、褒められたの、初めてで、なんて言っていいか分からなくて……」
ネオに喜びの笑顔を作って見せる。
「あ、ああ~、そのことね。 うん! 分かればいいのよ!」
うんうん、とネオは満足気に首を縦に振る。
「それにしてもほんと、すごいよなぁ~」
ネオは改めて、絵に目を移す。
「ねぇ? これって、何かのキャラなの」
そのままの体勢で、女子高生に訊ねる。
「うん。月刊『クローバー』って雑誌知ってる?」
「ああ、少女雑誌の?」
「うん。そこで連載している漫画のキャラクターなの。この話がすごく気に入ってて……」
「その漫画のタイトルは何ていうの? な~んか、見たことあるんだけど……」
「『ミラーマジック』っていう漫画だよ」
「ああー、あの漫画ね! わたしも読んでるよ!」
「えっ、そうなの!?」
口元に手を置き、意外、と言わんばかりの表情を見せる。
「わたし、あんまり漫画とか読まない方なんだけど、これだけは何故かハマったのよ」
「そうなんだ」
「この漫画、二人のすれ違う恋愛模様を描いているでしょ。それに、いきなり予想できない展開に入り込むから、『この先どうなるんだろう?』って夢中になっちゃって」
「分かる分かる~。彼の方に実は想い人がいて、その子が何処にいるのか探したいとか」
「そうそう、それでね、」
ヒマワリの花が咲きほこるように、会話が弾んでいくが、
――キーンコーンカーンコーン。
時間だ。
「あ~、もう終わりなの。せっかくいいところだったのに~」
とネオは嘆く。
自分が「あの展開」に持ち込んでしまったことを少しばかり後悔した。
「5、6時間目の授業は何?」
作品名:moonlight(前編) 作家名:永山あゆむ