moonlight(前編)
「……」
無言の怒りを抑えてもらうためにネオは、ははは、と笑いながら、
「てへぺろー」
オチ収拾議論で思いついた案を実行してみる。これで、少しはなごんだ、とネオは思った。
しかし、
バッコ――――――ン!
鉄球のような拳で、未知流は無言で頭を叩いた。彼女は強いのだ。中学校まで空手を習っており、その実力は黒帯レベルだとか。
「いった~いっ!」
ネオは、涙目で叩かれたところ擦った。
「バカネオが」
ふ~っ、と未知流は拳に息を吹いた。
二人をこうしてみると、妖艶で肝の据わった姉といじっぱりの妹みたいな関係だなと、女子学生は思った。
「だってぇ~」
「だってじゃない! ……ごめんな、ネオが余計な茶々を入れて」
「い、いえ……」
ネオの姉として謝る未知流に、女子学生は思わず両手を振る。
「はあぁ~、センコーに怒られるし、みっちぃにも雷を浴びるしー、なんでこんなに運がないのよ~」
そのまま抜けた空気のようにぷっしゅ~っ! と膝を床につき、女子学生の机に顔を伏せて寝そべる。
その姿に女子学生は目を丸くする。
「はいはい、ご愁傷様。じゃあ、これからはバカな喧嘩しないで、仲良くやること! いい!?」
「はーい」
ネオの気の抜けた返事を聞いた未知流は、漆黒の長髪をパサッ! と揺らし、教室から立ち去る。
「だ……大丈夫?」
腑抜けになったネオを女子学生は、苦笑しながら見つめる。
「な、なんとか……」
ネオは女子学生の方へ顔を見上げ、Vサインをする。
その姿に、ははは、と女子学生は作り笑いするしかなかった。
「あっ!あの、絵の事なんだけど」
思い出すかのように、自分の描いたものについて触れる。
作品名:moonlight(前編) 作家名:永山あゆむ