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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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moonlight(前編)

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 「何をやっているんだ?」と、二年一組の周りに学生が次第に集まる。もちろん、男女関係なく。
 「おうおうどうした!?」と、走って会場に来るものや、「ものすごい舌戦だねー」と他人事のように見る学生。「女性の喧嘩ってこういうものなんだなぁ~」とか、「すげー」と、初めて見る女の喧嘩を新鮮な気持ちでまじまじと見つめる男子学生のやり取り。
 それに気づかず、二人は言い争う。
 そんな、『オチはどの方向へ導けばよかったのか』というお題目による、大激論ショーを、『あの女』の一喝のよって、終了へと導かれる。
 その女は、「あー、はいはい、どいてどいてー」と涼しげな顔で、大勢の学生たちの間を掻(か)い潜(くぐ)って進んでいき、教室へと入る。
 そして、
「おまえらぁーっ! いつまで喧嘩しとるんじゃあぁぁぁぁっ!!」
 ドゴ――――――ン!!
「「!!」」
 女子学生の机が破壊されるほどの鉄槌から、電撃が二人に向かって走る。
 ネオと女子高生は、その電撃に痺れたように、カク、カク、と少しずつ制裁者の方へ見やった。
「フン!」
 腕組みしてそこに立っているのは、
「み、みっちぃ……」
 みっちぃこと、長郷未知流(ながさとみちる)だった。
 刺々しい漆黒の髪の毛先が、さらに洗練されたものになっている。その姿はまるでSっ気たっぷりの黒薔薇の女王だ。紫色の魔のオーラが背中から見える。
 ネオと女子学生のみならず、周囲にいるギャラリーのみなさんまでもが、女王の怒りに慄(おのの)く。
 シーン、と者抜けの殻になったかのように静寂につつまれる。
 ややあって、黒薔薇の女王、いや、未知流様からの、
「おまえたちもぉーっ! これは見せモンじゃねぇんだぞ!!」
 ――雷がギャラリーを襲う。
「悪魔が現れた~っ!」、「わあぁぁっ~っ!」と廊下にいる学生たちは、一目散(いちもくさん)にその場から離れる。
「人を悪魔扱いするとは、失礼にもほどがあるっつうの!」
 廊下を横目で睨みつけ、ハア~、と息をつく。
 いやいやいや、悪の女王だったよ! とネオは内心でツッコミしつつ、キッと自分を睨み付けてくる未知流を見つめる。まだ、紫のオーラは消えていない。
作品名:moonlight(前編) 作家名:永山あゆむ