「哀の川」 第三十六話
初七日を済ませてから、直樹と杏子は東京へ戻った。カラオケの店もなじみ客が杏子の結婚を祝ってくれたが、店を閉めるということが淋しかった。
盛大にお別れパーティーをやろうと、客の一人が音頭を取って準備を始めた。この年の12月28日に店は閉店と決まった。
神戸に行って自分が何をするのか杏子はまだ決めていなかったが、実家に住んでしばらくは母と佐伯と三人で旅行でもしてのんびりしたいと考えていた。
東京に出てきて、10年も経たない間に好子、功一郎、環、そして父と4人も亡くなってしまった。人の一生なんてはかないものなんだと思いにふけることもある。幸せってなんだろう?自分に問うてみた。
作品名:「哀の川」 第三十六話 作家名:てっしゅう