24分の1の恋人
見村は離婚していた。自分の母親と3人暮らしであった。父親はオートレーサーであったが、レース中に事故で死亡した。
バイク屋がやりたいと言う父の遺志をついで、この店を開いたのであった。
その時結婚していたが、妻の由美はバイク店を開くことに反対した。
生まれたばかりの舞を抱えて事務を由美は手伝った。
労働時間は長くなるばかりで、サラリーマンの時よりも収入は少なかった。
何も要求しない代わりに、舞を引き取ってと言い、離婚の話になった。
見村は承諾した。由美を愛していたのだが、由美に苦労をかけていることに済まない気持ちがあったのだ。
「どこに行っても俺のとこに居るより幸せになれるだろう」
離婚届に判を押す時に、見村は由美に言った。
36歳の時であった。