24分の1の恋人
一流企業の自動車会社である。
販売促進課に配属された。日の丸自動車はどちらかと言えばまだ新しい会社であった。
まだデーラーが確立されていなかったため、販売力が他のメーカーに比べ弱かったのである。
小百合は自転車店や系列のバイクの店を回っては自動車の販売を依頼した。
小さな個人の店が自動車の代理店になるにはある程度の金が必要になる。いわば冒険であった。それを説得させるのが小百合の仕事である。
真夏の暑い日であった。まだほとんどの車にはクーラーは着いていない。窓を開けての走行であった。
小百合の走っている前方に、小さな女の子が屈んでいた。小百合は車を止めた。
「どうかしたの」
「足が痛い」
少女の足を見ると、血豆が出来ていた。
「靴が当たるのね」
少女は小さくうなずいた。多分小学1年生くらいだろう。
「お家はどこ」
「遠いよ」
「そう、お姉ちゃんが送っていくよ」
小百合は少女を車に乗せた。
「お名前聞いてもいいかな」
「まい」
「ありがとう。まいちゃん」
舞の家は5分ほどで着いた。一戸建ての大きな家である。家の周りはレンガの塀で囲まれていた。