24分の1の恋人
小百合は小さな時から手先の器用な子であった。それは母親の由紀の影響があったのかもしれない。由紀はミシン刺繍で生計を立てていた。刺繍を仕上げるには裏糸をハサミで切らなくてはならない。糸だけを短く切るのは、ゆっくりなら誰にでもできるのだが、早く切るとなるとなかなかできないものである。ハンカチに花柄の刺繍をするのは3分ほどで出来てしまう。
小百合が学校から帰るころには100枚以上が出来ていた。それを手早く仕上げなくてはならなかった。その仕事を小百合は小学3年生の時から始めていた。辛いと思った事はなかった。
母が踏むミシンの音や出来上がった刺繍を見るのが楽しみであった。
母と小百合の2人暮らしであったが、生活が大変なのは小さな小百合にも解っていた。
刺繍のついたハンカチを小百合が手にしたのは小学6年生の時であった。卒業式の日に母が渡してくれた。
「涙が出たらこのハンカチで拭くんだよ」
「もったいないよ。こんな綺麗なハンカチが汚れるよ」
「今日の涙は綺麗だから汚れないよ」
小百合は先生や友達と教室を出るとき、やはり涙が出た。母に言われたように涙を拭いた。
さくらの刺繍のハンカチであった。涙にぬれた桜はピンクの色が濃く見えた。
小百合は24歳になった今でもその事を思い出す事がある。
母と別れて東京での生活も6年になった。
大学に進学し卒業するとそのまま東京に就職した。
小百合が学校から帰るころには100枚以上が出来ていた。それを手早く仕上げなくてはならなかった。その仕事を小百合は小学3年生の時から始めていた。辛いと思った事はなかった。
母が踏むミシンの音や出来上がった刺繍を見るのが楽しみであった。
母と小百合の2人暮らしであったが、生活が大変なのは小さな小百合にも解っていた。
刺繍のついたハンカチを小百合が手にしたのは小学6年生の時であった。卒業式の日に母が渡してくれた。
「涙が出たらこのハンカチで拭くんだよ」
「もったいないよ。こんな綺麗なハンカチが汚れるよ」
「今日の涙は綺麗だから汚れないよ」
小百合は先生や友達と教室を出るとき、やはり涙が出た。母に言われたように涙を拭いた。
さくらの刺繍のハンカチであった。涙にぬれた桜はピンクの色が濃く見えた。
小百合は24歳になった今でもその事を思い出す事がある。
母と別れて東京での生活も6年になった。
大学に進学し卒業するとそのまま東京に就職した。