ゴルフは喜劇か悲劇、それともミステリー?
(9) せっかち
兎に角せっかちの部長がいた。
じっと待つことが出来ないのだ。
会社の部内コンペ、部長にスモークボールを打ってもらってから始まる。
だが、その部長はスモークボールを打たず、普通のボールを打って、そのまま一人前進。
順番気にせず、連続打ちで、あっと言う間にグリーン上にいる。
そして、もうパターをしているではないか。
それを部下たちが必死で追い掛ける。
そんな上司を、米国滞在中に一度地方のゴルフ場に招いたことがあった。
そこはカートでフェアー内を走れ、ボールのそばまで行ける、
便利ではあるが、普通はまずボールの10ヤード近辺まで行き、素振りをして、慎重に打つものなのだ。
しかし、部長は違った。
馬を駆けるように、カートでボールに近付き、止まらぬ内に飛び降りる。
そして、その後見事の早業でカチンと打ち、即座にカートに戻り、さっさと走り出す。
スゴイなあと感心していると・・・遂にだ。
信じられないことが起こった。
部長がもうカートからは降りないのだ。
そのままクラブで打って行く。
それはまるで大英帝国の格式あるスポーツ、乗馬しながらボールを打って行く「騎馬ホッケー」。
格調高く言えば・・・それは「ポロ」(polo)だ。
だが実態は・・・そんな格好良いものではなかった。
空振りするは、どこへ飛んで行くかわからない。
その上に、その姿は不様そのもの。
カートから振り落とされそうで、ヒヤヒヤものだった。
落ちたらもっと面白いかもと思ったりもしていたが、部長はなかなかしぶとくポロをやってのけていた。
しかし、今思うと、
これほどまでにゴルフを侮辱したプレーを見たことがない。
ゴルフ教訓
「せっかちゴルファー、御免被りたい」
作品名:ゴルフは喜劇か悲劇、それともミステリー? 作家名:鮎風 遊