~双晶麗月~ 【その2】
トントントントントン……リズミカルな音。これはキッチンから?
何か切ってるのかな…
あぁ〜…いい匂い〜…これは…お味噌汁の匂いだ〜。
そうか、さっきはネギを切ってたのかな、あぁ早く食べたいなぁ…
目覚ましが鳴ってもいつも起きられない私は、寝ぼけていて夢の中なのかどうかまだわからない。
「お味噌汁…食べた…い……」
今すぐ食べたいと思った。
すると、返事が返ってきた。
「い…ですよ。ちょっ…待って下さ…ね」
途切れ途切れに聞こえる。
ベッドで横向きに寝ていた私は、その声をヘンにも思わず、ごろんと寝返りを打ち大の字になる。そして、再び夢の中へ…
トントントントントン……今度は誰かが階段を上る音?誰だろう?
ガチャリと部屋のドアが開く音が聞こえる。
「咲…、味見…てみます…?」
さっきより味噌汁の匂いがする…いい匂い……
私は咄嗟に返事する。
「食べ…た…い……」
しばらくして、くちびるに柔らかい感触。そこから注ぎ込まれる温かいもの……
私はそのままごくりと飲んだ。
いい味…
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈