~双晶麗月~ 【その2】
その後私は、自分があまりに興奮していることに気付く。
「って、こんなことずっと考えてても仕方ないか…。ちょっと落ち着こう…」
しばらく深呼吸を繰り返してみた。そして自分の家族のことを急に思い出した。
【あぁ…どうしたらいいんだろう……母さん……父さん………】
【父さん…?】
「あぁあぁぁっ!落ち着いてる場合じゃないって!オトコと同居って!父さんになんて言えばいいんだよ〜っ!しかも見知らぬオトコォ〜〜ッ!絶対追い出さないと!ヤバイって絶対!」
半ば発狂するかのような声で思わず私は叫んだ。
すると玄関からミシェルがひょっこり顔を出した。
「そんなとこでブツブツ考えてないで〜早く家に入らないとまた狼来るかも〜」
「えぇっ!」
「なんてね」
全てを見透かすようなグレーの目を細め、イタズラっぽくミシェルは笑う。そして、門の前にいる私に何かを投げてきた。私は慌ててキャッチした。
それは、フェンリルの末裔に追いかけられる直前、コンビニで買った缶コーヒーと同じものだった。どうやら私が投げ捨てたやつっぽい。その証拠に横が不自然に凹んでいる。
「それ、砂糖多すぎですね。太りますよ?」
玄関口からミシェルは淡々と言った。
「じゃかあしいわっ!」
私はその缶コーヒーを玄関の方へ勢いよく投げつけた。
ミシェルはそれを上手く受け取る。
「僕が今からブラックでコーヒー作っときますね。[子供]じゃないんだから、飲めないなんて言いませんよね?」
そう言ってにっこり笑ったミシェルは、玄関をパタリと閉めた。
私はというと、[守護はいらない]と言ったことを後悔するどころか、その後悔自体に後悔していたのだった……
【アイツ!!絶対追い出してやるっ!】
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈