~双晶麗月~ 【その2】
私たちが着地したのは、一人暮らしをしている私の家の前だった。
2階建て、黒い屋根、黒い玄関、ベージュの外壁。昨日まで放置気味だった庭は、なぜか綺麗に整理されており、今までなかったはずの車も1台置いてある。ダークグリーンの車だ。
表札には[海藤(kaidou)]と書いてある。間違いなく私の家らしい。
「今からここが[僕たちのおうち]ですよ。間違えないで下さいね」
そう言ったミシェルは、にこにこしていた。
「おいちょっと待てよ!突然[僕たちのおうち]とかって言われても!ここ、私のうちだからっ!まさか付きっ切りで守護するつもりか!」
「えぇ。そう決めたんで」
「はぁ〜?勝手に決めんなよ!」
「手続きは完了しています。ご安心下さい」
「はっ?何の手続き?」
「僕がここに住むための手続きです」
「ちょっと待て!ちょっと待て!冗談じゃないよ!なんでここに住むんだ!帰れって言ってんだろ!」
「はい、ちゃんと帰りますから心配しないで」
「心配とかじゃねぇよ!手続きってどう…」
「手続きなんて、ちょちょいのちょいですよ」
「あっ!」
この時雄吾の姉さんが見た[兄貴]は、間違いなくミシェルだったと確信した。
【まさか!まさか!ここへ来ることになったのも、フィルが導いたんじゃなくてコイツじゃないよな?】
ミシェルはにこにこと笑ったままだ。
私は顔面蒼白になった。
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈