~双晶麗月~ 【その2】
「『漏れすぎる』って、どういうことだよ」
「あなたはご自分が、他の[人間]と違うということに気付きませんか?」
ミシェルのその問いに、私は少し戸惑った。
「……私は物心付いた頃から色々な気配を察知していて……ただそれだけじゃないか…」
「他の[人間]でそういう方はいましたか?」
「…いなかったよ……」
「そういうことです」
言葉を詰まらせながら答えた私に、ミシェルは即答し、私の目をまっすぐに見つめた。
だが私は見つめ返すことができず、目を逸らした。
「他にも何度か思考が漏れていることがありましたけど……そのうち慣れるだろうと、僕はあえて何も言いませんでした」
「…………」
何も言い返せない私は、グラスの水を一気に飲み干し、濡れた机の上に叩き置いた。
「あともう一つは……おそらく相当動揺していたのでしょうね。忘れているでしょう?」
「動揺?」
ミシェルは私が置いたグラスを避け、持ってきた布巾で濡れた机の上を拭きながら静かに言った。
「僕が……フィルグスを消した時です」
「あっ……!」
私は忘れようとしていたあの出来事をまた思い出してしまった。
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈