~双晶麗月~ 【その2】
それからミシェルは少し優しい顔をして、話を切り替える。
「で、もう一つの会話ですけど……先日フェンリルの末裔を始末した後、僕たちの家に到着し、家に入る前です。あれは逆に、あなたの思考回路が僕に駄々漏れでした」
「は?駄々漏れっ?」
私は慌ててあの時自分が何を考えていたのか、必死に思い出そうとしていた。
何か、聞かれちゃマズイこと……考えてなかったか……?
「あの時、かなり心乱れていたようで……いろんなことを延々考えている姿は……」
そう言いかけ、ミシェルは静かに微笑む。
「可愛かったですよ」
私は自分の顔が赤くなるのがわかった。
「はぁっ?何言ってんの!何が『可愛かった』だよ!勝手に脳内覗き見しやがって!」
「いえ、駄々漏れだったんですって。聞くつもりじゃなかったんです。きっと、気が緩むと流れ出てしまうんでしょうね」
ミシェルはくすっと笑う。
「気が緩むと流れ出ちゃうって!緩むも締めるもないだろッ!あのさ!普通考えてることが人に伝わることないんだからな!それを駄々漏れって!」
「大丈夫です。おそらく僕にしか漏れていなかったはずですから」
「それどういうことだよ!」
するとミシェルは真顔になった。
「あなたは僕が渡した白いハンカチを持っていますね?いつも肌身離さず持っていてくれて」
「なっ……まさか……何か仕掛けられているのか……?」
私はポケットの中のハンカチに手をやる。
「えぇ。それには僕の術をかけてあります。そのハンカチの使い道は、また後ほどお話しますが……」
「脳内覗き見する術でもかけてあるのかよ」
「いえ、そういうことではありません。まず、あなたの思考が狼一族や他のものに漏れないようにしてあります」
「これで……漏れないように……?」
「はい。あなたは思考が漏れすぎる。それだけでも危険と言えるでしょう」
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈