~双晶麗月~ 【その2】
男がフィルを弾き飛ばし、壁に打ちつけられたフィルは地面に落ち、消えた。
いともたやすく、残酷なまでに、私の目の前で……
そしてあの白い壁には……フィルの……血が……たくさんの血が………
「『フィルグスはナーストレンドに帰った』と、そう僕は言ったと思います」
「あ……男の……体を裂く……?フィルが……?あの……フィルが……!」
私は急に混乱して、目の前が真っ暗になった。
「しっかりして下さい!落ち着いて」
ミシェルは机を拭いていた手を止め、そのままベッドに塞ぎこんだ私の肩に手をかけ、何度も呼びかけた。それでも私はさらに錯乱していた。
「あの白い壁にはたくさんのフィルの血が飛び散っていた!私は!私は思い出したくはなかった!あの出来事は……あの出来事は私の中にあってはならない記憶……フィルが!ナーストレンドに行くはずなんかないんだよ!死者の体を裂く?フィルは守護獣なんだ!そんな……私を騙すようなことするはずがないんだよ!」
「咲夜…」
ミシェルは震える私をそっと抱き起こした。
そしてベッドに座る私の前で立ち膝になる。
「咲夜……僕は……謝らなければいけません……あの時のことを……」
私はさらに怒りがこみ上げてきた。
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作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈