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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その2】

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 ミシェルはそのまま話し続けた。
「咲夜の持っていた本、北欧神話の本ですが……あれには書かれていないことがまだまだあります」
「書かれていないこと……?」
「えぇ。知っておいて欲しいのは……フィルが帰った場所、ナーストレンドでは、世界終末の日を迎えてもなお、二千年近くに渡り争いが続けられています。その争いとは、先日現れたフェンリル一族と、ニズホッグとの間で、です。理由は……些細なことだったんですけどね」

「ミシェルとニズホッグって、何か……繋がりがあるんじゃないのか?ミシェルはニズホッグなのか?」
 私がそう聞くと、ミシェルはちょっと暗い顔をした。

「僕は……ニズホッグそのものではありません。アース神族です」
「アース神族……?九つの世界の一番上にあるアースガルズに住む……神?降りられるもんなのか……?」
「そうですね……ラグナロク以前は[神]と言える者がほとんどでしたが、今はもう神というのは名前だけになりつつある気がします。それぞれの世界の境界がなくなってきているというのが正しいのかもしれません。
 今でこそ[神族]がこの人間界……ミズガルズへ降りることができるようになりましたが、それもごく限られた者のみ。[神族]の持つ波動は、ミズガルズには受け入れられないほどの大きさです。その波動が小さい者は容易に降りられますし、逆に波動を小さくできる能力のある者ならば降りられるでしょう」

「ミシェは……?」
「僕は……」
 ミシェルはそう言いかけ、言葉を詰らす。

「そう、ニズホッグは今もフヴェルの泉に棲んでいますよ」
「ミシェはニズホッグの何なんだ?オマエはいったい何者なんだ……?」
 私がそう聞くと、ミシェルはため息をついた。
 聞いてはいけないことだったのか……?